ひねくれ先生のブログ

30代公立小学校教員(算数が好き)が日々思うことを徒然なるままに書くブログ

自尊感情とは何か

自尊感情は大切だ」とあらゆるところで言われるようになったけれど、「成功体験が大事」とか「褒めると良い」とか、「それは違うのでは?」と思う解釈も多いので自分の考えを整理しておく。

 

そもそも自尊感情って…

 私が「自尊感情」という言葉(当時は自己肯定感と言われていた)に出会ったのは今から15年ほど前だったと思う。私はこれを「自分を丸ごと肯定する力」だと考えている。自分の良いところも、悪いところも含めてありのままの自分である。「ダメな自分も自分だ、でも、そこからやっていくしかないよね。」という諦めにも似た境地。

 私が大学生くらいの頃に「自分探し」ってのが流行った。色んな場所(海外とか)に行って、今の自分ではない自分を探しに行くってやつ。当時の私は、今より遥かにひねくれていたので、これが嫌いだった。でも、これをぶった斬ってくれた「百万円と苦虫女」という映画があった。そのセリフがあまりにも秀逸なので紹介する。

百万円貯まったら転々と引越しをして生活をする主人公との会話

「自分探しみたいなことですか?」

「いや、むしろ探したくないんです。探さなくたって嫌でもここにいますから」

 「自分探し」への強烈なアンチテーゼに痺れた。でもそういうことで、「今の自分からガラッと変わるんだ!」という人はただ「自分から逃げているだけ」である。今の自分を受け容れられる力が自尊感情なのだと思う。

 

どうやって自尊感情を高めるか…

「褒める」と「叱る」どちらが自尊感情を高めるでしょうか?

 これは私が大学の時に受けた講義で聞かれた質問である。私は当時は「褒める」だと思っていた。答えは両方とも自尊感情を下げるであった。つまり「褒める」も「叱る」も両方とも価値観の押し付けであって、その価値に見合うことを求められている。この2つは「私の価値観に沿ったあなたを認める」という強烈なメッセージである。つまり「私の価値観に合っていないあなたは認めない」になっていて、「あなたの存在を認める」からは離れてしまうのである。

 当時の私はこれが納得できなくて質問をしに行った。

「あなたのおかげでこれができるようになった」という褒め方は自尊感情をあげませんか?」という質問に対して教授の答えは非常に明快だった。

「それは褒めるではなく感謝です。」

 

また、こんな例もある。

 「のび太結婚前夜」に出てくるしずかちゃんのパパとしずかちゃんの会話。

「パパ! あたし、およめにいくのやめる!!」

「わたしが行っちゃったらパパさびしくなるでしょ。
 これまでずっと甘えたりわがままいったり……
 それなのに私のほうは、パパやママになんにもしてあげられなかった」

 そう言われたパパの返事が素晴らしい

「とんでもない。
 きみはぼくらにすばらしいおくり物を残していってくれるんだよ。
 数えきれないほどのね。
 最初のおくり物はきみがうまれてきてくれたことだ。」

 

 そう、つまり「あなたが生まれてきたこと自体」が素晴らしい。「あなたを丸ごと肯定する」という強烈なメッセージ、これが自尊感情を育む正体だ。だから褒められなくたって、成功体験がなくたって、そんな自分を受け容れてくれる存在があるかどうか。これが自尊感情を高めるたった一つの方法だと思う。

 

最後に熊木杏里さんの「誕生日」という曲を紹介して終わる。

 

理由は何もないんだよ

あなたという人がいることでいいんだよ

 

※「自尊感情」「自己肯定感」「自己有用感」どれも同義として扱った。