自尊感情とは何か
「自尊感情は大切だ」とあらゆるところで言われるようになったけれど、「成功体験が大事」とか「褒めると良い」とか、「それは違うのでは?」と思う解釈も多いので自分の考えを整理しておく。
そもそも自尊感情って…
私が「自尊感情」という言葉(当時は自己肯定感と言われていた)に出会ったのは今から15年ほど前だったと思う。私はこれを「自分を丸ごと肯定する力」だと考えている。自分の良いところも、悪いところも含めてありのままの自分である。「ダメな自分も自分だ、でも、そこからやっていくしかないよね。」という諦めにも似た境地。
私が大学生くらいの頃に「自分探し」ってのが流行った。色んな場所(海外とか)に行って、今の自分ではない自分を探しに行くってやつ。当時の私は、今より遥かにひねくれていたので、これが嫌いだった。でも、これをぶった斬ってくれた「百万円と苦虫女」という映画があった。そのセリフがあまりにも秀逸なので紹介する。
百万円貯まったら転々と引越しをして生活をする主人公との会話
「自分探しみたいなことですか?」
「いや、むしろ探したくないんです。探さなくたって嫌でもここにいますから」
「自分探し」への強烈なアンチテーゼに痺れた。でもそういうことで、「今の自分からガラッと変わるんだ!」という人はただ「自分から逃げているだけ」である。今の自分を受け容れられる力が自尊感情なのだと思う。
どうやって自尊感情を高めるか…
「褒める」と「叱る」どちらが自尊感情を高めるでしょうか?
これは私が大学の時に受けた講義で聞かれた質問である。私は当時は「褒める」だと思っていた。答えは両方とも自尊感情を下げるであった。つまり「褒める」も「叱る」も両方とも価値観の押し付けであって、その価値に見合うことを求められている。この2つは「私の価値観に沿ったあなたを認める」という強烈なメッセージである。つまり「私の価値観に合っていないあなたは認めない」になっていて、「あなたの存在を認める」からは離れてしまうのである。
当時の私はこれが納得できなくて質問をしに行った。
「あなたのおかげでこれができるようになった」という褒め方は自尊感情をあげませんか?」という質問に対して教授の答えは非常に明快だった。
「それは褒めるではなく感謝です。」
また、こんな例もある。
「のび太の結婚前夜」に出てくるしずかちゃんのパパとしずかちゃんの会話。
「パパ! あたし、およめにいくのやめる!!」
「わたしが行っちゃったらパパさびしくなるでしょ。
これまでずっと甘えたりわがままいったり……
それなのに私のほうは、パパやママになんにもしてあげられなかった」
そう言われたパパの返事が素晴らしい
「とんでもない。
きみはぼくらにすばらしいおくり物を残していってくれるんだよ。
数えきれないほどのね。
最初のおくり物はきみがうまれてきてくれたことだ。」
そう、つまり「あなたが生まれてきたこと自体」が素晴らしい。「あなたを丸ごと肯定する」という強烈なメッセージ、これが自尊感情を育む正体だ。だから褒められなくたって、成功体験がなくたって、そんな自分を受け容れてくれる存在があるかどうか。これが自尊感情を高めるたった一つの方法だと思う。
最後に熊木杏里さんの「誕生日」という曲を紹介して終わる。
理由は何もないんだよ
あなたという人がいることでいいんだよ
※「自尊感情」「自己肯定感」「自己有用感」どれも同義として扱った。